スクリーンで出会った5人の素敵でカッコいい女性たち♪
アメリカ・フォーブス誌の統計によると2016年に映画でセリフを与えられている登場人物のうち女性の割合は28.7%。
また興行収入1億ドル以上を突破したいわゆるメガヒットと呼ばれる作品のうち女性が主人公の映画は2010年には25%。
つまり4本に1本の割合だったわけですね。ところが2018年になるとその割合は42.9%まで増加しています。それはなぜか?
パティ・ジェンキンスが読み解く女性主人公映画が増えた理由
この理由について2007年「ワンダーウーマン」でメガヒットを記録したパティ・ジェンキンス監督こう分析しています。
「社会でも女性の活躍がめざましい今となっては、女性なのに強い、女性なのにこんなことができるという視点は必要なく、能力のある女性というキャラを特別なものとして扱う必要がなくなった」
これはまったく正しい分析だと思いますね。映画というエンタテインメントの世界で観客が求めているのは主人公の性別ではなくあくまで作品のクオリティー。
そういった意味ではこの傾向はファンにとって歓迎すべきことだと思います。というわけで今回は極私的のスクリーンで出会った素敵でカッコいい女性が主人公の作品を5本チョイスしてみました。
「 グロリア」のジーナ・ローランズ
1981年公開 監督ジョン・カサベテス
ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞受賞のニューヨークを舞台にしたハードボイルド・アクション。
FBIに情報を漏らした会計係ジャックを抹殺しようと彼のアパートを取り囲む組織の面々。
そのとき同じフロアに住むグロリアがコーヒーを借りにジャックの部屋を訪れると、ジャックに6歳の息子フィルと会計の詳細を記したノートを預かって欲しいと頼まれます。
異様な雰囲気を察したグロリアはその願いを聞き入れます。そしてフィルを連れて部屋に戻った瞬間ジャックの部屋は爆破されてしまいます。
そしてアパートを脱出し身を隠すグロリアとフィルに組織の手が伸びて・・・。とにかくこの映画はジーナ・ローランズがカッコいいんですよ。
ただ逃げ回っているだけではなく追っ手に対してはスナップノーズのリボルバーを容赦なくぶっ放すんですね。
ハードボイルド映画の主人公は男性だけじゃないことを証明した女性映画としては殿堂入りの作品。
ちなみにリュック・ベッソンの「レオン」はこの映画を原型にしたと言われています。
「ココ・シャネル」のシャーリー・マクレーン
2008年公開 監督クリスチャン・デュゲイ
この作品の次の年2009年に「ココ・アヴァン・シャネル」というココ・シャネルを主人公にした作品が公開されていますが、個人的には断然こちらの方が見応えはありました。
その要因は何と言っても出番はそう多くはないですがアカデミー賞女優シャーリー・マクレーンの圧倒的存在感!
バルボア・ボブローヴァ演じる若き日のシャネルロマンスを中心に描かれていますが、シャーリー・マクレーンが登場する晩年のシーンはガラリと雰囲気が変わります。
第二次大戦が終わり亡命生活を経て15年ぶりに復活したシャネル、しかしコレクションは評論家や顧客に酷評されます。
「もうシャネルは終わった」しかし彼女は決してあきらめず、古い価値観を壊しそこからまた這い上ろうとします。
シャーリー・マクレーンのシーンは映画というよりドキュメンタリーを観ているようで、ココ・シャネルがふたたび頂点に君臨するまでの野望や権力欲も余すことなく描かれています。
ココ・シャネルを主人公にした映画は4作品ありますがシャーリー・マクレーンの鬼気迫る演技によってこの作品が文句なしにダントツですね!
「ニキータ」のアンヌ・パリロー
1991年公開 監督リュック・ベッソン
この映画を「犯罪版マイ・フェア・レディ」と言った人がいましたが上手い表現ですね!
銃撃戦の末に警察官を射殺した少女は逮捕され終身刑を宣告されます。しかし護送された部屋に政府の秘密警察官ボブが現れ、別の人間となって政府に雇われるか殺されるかの選択を迫られます。
逃げることをあきらめたニキータは政府によって訓練され凄腕の暗殺者に仕上げられます。
このシーンがいかにもフランス映画らしい雰囲気があってグイグイ引き込まれます。そしてニキータをレディに仕立て上げる教育係が名女優ジャンヌ・モロー。
メイク道具をテーブルに並べ彼女はニキータに言います。
「際限のないものがふたつあるわ。女の美しさとそれを利用することよ」
このジャンヌ・モローもカッコいいんですよね。この作品に限っては男優陣はすっかり霞んでますね。
そしてニキータはスーパーで出会ったマルコと恋仲になりますが・・・。ラストもシビれますよ!
リュック・ベッソンはインタビューで「自分の作品はニキータ以前とニキータ以後で分けられる」と語ってますが、事実この映画の成功によってハリウッドに招かれ「レオン」を撮ることになりました。
その意味でも記念碑的作品ですね!
「プラダを着た悪魔」のメリル・ストリープ
えっ?なんで?「プラダを着た悪魔」ならアン・ハサウェイでしょう大ブーイングが飛んで来そうですが、私はこの作品のキモはメリル・ストリープ演じるファッション誌「ランウェイ」編集長ミランダのキャラクター造形にあると思っています。
物語は大学を卒業しニューヨークにやって来たジャーナリスト志望のアンディが、ひょんなことから多くの女性が憧れる一流ファッション誌編集長のアシスタントとして採用されるところから始まります。
ところがこの編集長が鬼どころか悪魔的横暴さを発揮する独裁者で、そのアシスタントはこれまでに何人もの犠牲者を出している最悪のポジション!
仕事は厳しく1ミリのミスも許さずおまけに仕事以外に自分の身の回りの世話までアシスタントに押し付けるまさに暴君。
朝から晩まで鳴り止まない携帯はアンディの私生活まで影響を及ぼしますが、アンディも粘り強くミランダの要求に耐え続けます。
しかしやがて本当の自分を取り戻そうと・・・。
「ランウェイ」編集長ミランダはファッション誌「ヴォーグ」の編集長アナ・ウィンターがモデルだと言われています。
映画で雑誌の締め切り前になって特集ページのために用意された服をすべて却下し部下が大慌てするシーンが出て来ますがこれも実際にあったエピソードだそうです。
アナ自身も「噂はすべて本当のことよ」と言ったそうですから映画の暴君ぶりはすべて事実であったようですね。
しかしこと仕事に関しては絶対に妥協せず「発想力」「決断力」「統率力」に優れたミランダは真のプロフェッショナルでそこがカッコいいんですね。
まぁ知り合いになりたいかと聞かれれば答えは保留させていただきますが・・・。
そんなミランダの暴君ぶりと華やかなファッション業界の裏側を観るだけでも価値のある作品です。
「毎日かあさん」の小泉今日子
2011年公開 監督小林聖太郎
西原理恵子の実体験をもとにした人気漫画を原作とした作品。小泉今日子と永瀬正敏の元夫婦が映画で夫婦役を演じることでも話題になりましたね。
また同時期に西原理恵子の夫で戦場カメラマンの鴨志田穣の原作「酔いがさめたら、うちに帰ろう」も映画化されました。
夫がアルコール依存症という共通のテーマがあり妻の視点と夫の視点という観点からも面白い対比だなと思いましたが、私的には作品の出来としてはこちらに軍配を上げたいですね。
売れっ子漫画家であり二児の母である西原理恵子は忙しい毎日も、持ち前のバイタリティーでこなして行きますが戦場でのトラウマから夫の鴨志田穣は重度のアルコール依存症。
食道静脈瘤の破裂でなんども吐血し入院しますが、退院するとまた酒浸りで酔って暴れ妻に罵詈雑言を浴びせる日々。
そしてついに妻は夫に離婚届を突きつけふたりは離婚することに、別れて改めて家族の大切さに気づいた鴨志田は依存症治療のためアルコール専門の隔離病棟に入院。
依存症を克服しようと懸命に闘いますが末期ガンに侵され・・・。そして余命長くない鴨志田を西原はふたたび家族として受け入れる決意をします。
ご家族や知り合いにアルコール依存症患者がいる方には重いテーマの作品だと思いますが、監督はあえてカラッと描いているようですね。
小泉今日子の演技も良かったですが映画を観ているとフィクションの向こう側に、西原理恵子という人の存在をどうしても感じてしまいます。
「西原理恵子ってカッコいいな」観終わったあとでそんなことを感じさせる作品でした。
相手役から主役へ
洋画、邦画を問わず昔から女優さんは男性主人公の相手役、そんな風にシナリオが書かれ作品が作られていましたね。
その典型が国民的映画と言われる渥美清さんの「寅さんシリーズ」制作されるたびに今回のヒロインは?と話題になっていました。
それが女性を主人公にした小説が多く書かれるようになり、その原作がドラマ化されヒットするにつれて映画の世界でも女性を主人公とする作品が増えたという印象があります。
でも本当のところ映画ファンの思うところはひとつだけ「面白かったらそれでいい!」これに尽きるのではないでしょうか?