映画ファンなら誰でも、もう何度も繰り返し観て主人公の動作のひとつひとつ、セリフもすべて覚えているような作品がありますよね。
俳優の故山城新伍さんがジョン・フォード監督ヘンリー・フォンダ主演の「荒野の決闘」を週に一度必ずご覧になっていたのは有名な話しですが、映画ファンなら誰しもそんな自分にとって大切な作品があると思います。
ただ面白いのは何度も観るわけですから好きな作品には違いないのですが、生涯のベスト10を選ぶとまったく違った結果になったり、そのあたりが映画ファンの特殊な心理と言えそうですね。
そこで今回は繰り返し何度も観た作品を、記憶をたどりながらランキング形式で振り返ってみることにしました。
それではまず10位から!
10位 東京裁判
1983年公開 小林正樹監督作品。
今も裁判の正当性が問われ続けている「極東国際軍事裁判」通称東京裁判。アメリカ国防総省が記録用に撮影し収録していたものを編集したドキュメンタリー映画。
いわゆる東京裁判史観や小林正樹、小笠原清によって共同執筆された脚本の内容には賛同しかねるところはたくさんありますが、あの裁判の全貌が明らかにされ、自分自身この裁判や先の大戦について考えることが出来たのは大きな変化でした。
4時間37分という長い作品ですが裁判の速記録から削除されている、ブレーク二ー弁護人の原爆投下に対する追及など、先の大戦を総括する意味において貴重な作品だと思います。
9位 男たちの挽歌
1986年公開 ジョン・ウー監督、チョウ・ユンファ主演作品
今や世界的知名度を得たジョン・ウーとチョウ・ユンファの名を知らしめた作品。それまでコメディーとカンフー映画が主流であった香港で「香港ノワール」という新たなジャンルを確立した記念碑的映画でもあります。
スローモーションを多用した銃撃戦や火薬を大量に使った爆破シーンなど、その後の世界中の作品に多大な影響を与えたとされています。
とにかくチョウ・ユンファの二丁拳銃がカッコよく、この作品を観て以来大ファンになりました。そのガンアクションは一見の価値あり!おすすめです。
8位 麗しのサブリナ
1954年公開 ビリー・ワイルダー監督、オードリー・ヘップバーン、ハンフリー・ボガート主演。
名匠ビリー・ワイルダーの真骨頂であるロマンチック・コメディーの傑作!オードリーと言えば「ローマの休日」を真っ先にあげるファンも多いですが、この作品や「昼下りの情事」など。
オードリーの魅力を最大に引き出したのはワイルダー監督だと声を大にして言いたいですね。
その上ハードボイルドの権化とも言えるボギーが相手役!もう面白くないわけがないですね。
可憐なヒロインと無骨で仕事ひと筋の男、そしてその弟でプレイボーイの遊び人。果たして恋の行方は?
7位 ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ
2000年公開 ヴィム・ヴェンダース監督作品
ライ・クーダーがプロデュースし世界で160万枚売上げ、1997年にグラミー賞を獲得した同名のアルバムを元に、キューバの音楽家たちの日常を描いたドキュメンタリー映画。
キューバのナット・キング・コールと敬愛されているシンガー、イブライム・フェレール。
かつて靴磨き職人だった彼は自分の人生を「もう歌はやめようと幻滅した。生きていく中で耐えることが多すぎて歌はもうたくさんだ。何も得られないと思った」と語ります。
そんな彼らがニューヨークのカーネギーホールでツアーのフィナーレを飾り、超満員のホールに大合唱がこだまし拍手が鳴り止まないシーンは、いつ観ても胸がいっぱいになります。
「生きていくことは辛いけど楽しいよ」そんな会話のひとつひとつが心に沁みる良作です。
6位 グリース
1978年公開 ランダル・クレイザー監督、ジョン・トラボルタ、オリビア・ニュートン・ジョン主演作品。
ブロードウェイで上演された学園ミュージカルを映画化した作品。
ジョージ・ルーカスの「アメリカン・グラフィティ」からの流れ、いわゆるアメグラものと言われる一本。
冷静に考えればジョン・トラボルタとオリビア・ニュートン・ジョンが高校生役を演じるのは相当無理があると思うのですが(笑)
ブロードウェイ上演時に加え、映画のためのオリジナル曲も多く佳曲揃いで音楽面でも楽しめる作品ですね。
作品の質から言えば「アメグラ」とは比べものにはならないですが・・・完全に個人的思い入れで何度も観た作品ですね。
5位 ゴッドファーザー PartⅡ
1975年公開 フランシス・フォード・コッポラ監督、アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ主演作品。
言わずと知れた名作ですが、何故PartⅡ?と思われる方も多いでしょうね。Ⅰ~Ⅲまでもう何度も観ましたが、この作品で若き日のドン・ヴィトーを演じたロバート・デ・ニーロの俳優としての魅力が衝撃的だったこと。
そしてヴィトーの後を継いだマイケルの内面の葛藤を、深く描かれていたことが作品により深みを与えていると思います。
組織を第一に考え裏切り者は、たとえ妹の夫や実に兄でも絶対に許さない冷酷なドンの顔を持つマイケル。
しかしその半面家庭かえりみず、妻の愛を失い誰にも弱みを見せることが出来ない孤独なひとりの男。
特に母親に会いに行き「パパは強かった、パパの心の奥を知りたいんだ。その強さがファミリーを失わせることにならなかったのか・・・時代が違う」そう心情を吐露するシーンはマイケルの孤独と寂寥感に胸を打たれる名シーンですね。
4位 がんばれベアーズ
1976年公開 マイケル・リッチー監督、ウォルター・マッソー、テイタム・オニール主演作品。
アメリカ映画お得意のハートフル・コメディーの傑作。かつてマイナーリーグの投手で、現在はプールの清掃員のバターメイカーが少年野球リーグ最弱のお荷物チームの監督を引き受けますが、初戦は何と点を取られ過ぎて試合にならないために試合放棄。
相手監督に「子どもたちが可哀想だとは思わないのか」と罵倒されたバターメイカーは一念発起!
元恋人の娘で20センチ以上曲がるカーブを投げるアマンダ、街の不良で鼻つまみ者ですが野球センス抜群のケリーをスカウトし、チームを立て直そうとします。
チームの子どもたちひとりひとりのキャラクター造形が素晴らしく、彼らの珍プレーにはもう笑いの連続!
チームは徐々に実力をつけやがて連戦連勝、遂にリーグ戦の決勝に駒を進めます。
そして決勝の一番大事な場面でバターメイカーは、チーム一の下手な選手に守備につくよう命じます。
選手の誰もが不思議に思い「ほんとにボクでいいの?」と聞く選手にバターメイカーは言います。
「ベンチを温めるために野球をやってるんじゃないだろう?」大いに笑って最後には爽やかな感動に包まれる。
家族揃って観てもらいたい名作ですね。
3位 ザッツ・エンタテインメント partⅡ
1976年公開 ジャック・ヘイリーJR監督作品。
MGMが創立50週年を記念して制作した、ミュージカル黄金時代のアンソロジー作品。
なんとまぁpartⅡの好きな奴だなと思っておられるでしょうが、part1で作品紹介をするだけだった当時64歳のジーン・ケリーと76歳のフレッド・アステアが、ダンスをしながら場面をつなぐというファンにとってはそれだけで感動するようなシーン。
そしてフランク・シナトラのフィルム・グラフィーが加えられていることもたまらないところですね。
ウェスト・サイド・ストーリー以来群舞が主流となったミュージカルですが、ここには全編目を見張るような素晴らしい個人芸があります。
初めてご覧になった方は驚きの連続だと思いま。一見に値する作品です。
2位 七人の侍
1954年公開 黒澤明監督、三船敏郎、志村喬主演作品。
もはや何の説明もいらない日本映画のの金字塔とも言える作品ですね。
戦国時代領主に召し抱えられていない侍たちはどうして生活をしていたのか、そこに興味を持った黒澤監督が調べてみると、農民を野武士や野盗から守りその報酬として食事を与えられていたという、ほんの数行の資料からヒントを得て制作されたのがこの作品です。
複数のカメラで同時に撮影するマルチカム方式や、望遠レンズを多用するなど画期的な撮影方法で迫力のあるアクションシーンを生み出しましたね。
のちにハリウッドでもリメイクされるなど、映画のあらゆる面白い要素の詰まった名作中の名作です。
1位 燃えよドラゴン
1973年公開 ロバート・クローズ監督、ブルース・リー主演作品。
衝撃と言えばこの作品を観たときの衝撃たるや、ほんとに凄いものがありました。カンフー映画というジャンルがまだ日本には入って来ていない時代。
あの研ぎ澄まされたような肉体と、スピード感あふれるアクションシーン。ヌンチャクという武器を知ったのもこの作品で、カンフー映画ブームのさきがけとなった記念すべき一作ですね。
現在も信者とも言えるファンが多く、彼の創設したジークンドーは世界各地に道場が存在しています。
また日本公開時にはすでに亡くなっていたと言う事実もショックでしたね。わずか5作だけ残った作品を改めて観てみると彼の本質は俳優よりも武道家であったと私は思います。
こうして考えてみると繰り返し観ることと作品の質とは、まったく関係がないような気がします。やはりテーマの重いものよりもよりエンタテインメント性の強い作品を選ぶ傾向にありますね。
さて今日はどんな映画を観ましょうか?