1本の映画が名作と呼ばれるための条件は、練り上げられたシナリオやキャスティング映像美など様々な要件が揃うことが必要ですが、音楽の占める要素も無視出来ないですね。
総じて名監督と言われる方々は劇中音楽の使い方が上手な人が多いですね。日本では黒澤明監督が音楽を効果的に使ったことで有名ですが、作品同様かそれ以上にサントラ盤が評価されている映画もたくさんあります。
やはり音楽を主題にして作品が多いですが、映画を観ていなくてもサントラ盤がひとつの音楽作品として評価されています。
すぐに思いつくだけでも軽く10以上ありましたが、映画の思い入れも含め聴くだけでも大満足の作品を10作に絞って見ました。
どれもオススメの名盤ばかりです!
ローズ
マーク・ライデル監督、ベッド・ミドラー主演の作品と言えばこの作品から12年後に制作された「フォー・ザ・ボーイズ」もあり、こちらも優れた作品で音楽も素晴らしい作品でしたね。
しかし何と言っても初めて観たときの衝撃は断然「ローズ」が上ですね。一般的に映画ファンと言われている人に比べてもかなりの数の映画を観て来ましたが、「ローズ」はオールタイム・ベスト5に入るくらい好きな作品です。
ジャニス・ジョプリンがモデルの60年代人気女性ロックシンガーのローズが酒とドラックに溺れ自ら破滅的な人生を歩む姿を描いた作品。
主題歌の「ローズ」はいろんなシンガーがカバーして、今ではスタンダードになっていますが他にも「男が女を愛する時」「ミッドナイト・メンフィス」など名曲揃い!
中でも圧巻は愛する恋人を失ったあと故郷でのコンサートで歌う「ステイ・ウィズ・ミー」もういつ聴いても鳥肌モノ!
ベッド・ミドラーのシンガーとしての実力がいかんなく発揮された名唱でこの曲を聴くだけでも価値があります。超オススメの名盤です!
五線譜のラブレター
「ビギン・ザ・ビギン」「トゥルー・ラブ」「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カムホーム・トゥ」「ナイト&デイ」などもう数え上げたらキリがないほど、数多くのスタンダードの名曲を世に送り出したコール・・ポーターの伝記映画。
シナトラやエラ・フィッツジェラルド始め有名なジャズシンガーで彼の曲を歌っていない人はいないというくらいの存在で、私も大好きな作曲家です。
ジャズファンのみならず誰でもどこかで一度耳にしたことのある曲も多く、コール・ポーターの世界に酔いしれたい何度も聴きたい1枚です!
アマデウス
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトという天才作曲家に出会ったアントニオ・サリエリの苦悩を描いた名作「アマデウス」。
幼いころから「神童」と呼ばれ長じて「天才」と呼ばれたモーツァルト。その死因は謎が多くサリエリによる毒殺説が囁かれたのも事実です。
フィクションも織り交ぜた作品ですが、一般的なモーツァルトのイメージを変えたという点において画期的な作品であったことは間違いのない事実ですね。
モーツァルトの楽曲は美しく荘厳に演奏されることが多いですが、この作品を見るとやはり華麗で刺激的。当時はかなり斬新な楽曲だったようで躍動感に満ちあふれてますね。
私は何故か休日の朝ゆっくりと流れる時間を感じながら聴くのが好きです。
ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ
キューバに生きる人々、そしてキューバのミュージシャンの素晴らしさを余すところなく伝えたドキュメンタリー映画の傑作!
ライ・クーダーがプロデュースした同名のアルバムは世界で160万枚売上げ97年グラミー賞を獲得、それまでほとんど知られていなかったキューバ音楽にスポットライトを浴びさせた作品です。
かつて靴磨き職人で「歌はもうやめようと幻滅した。生きて行く中で耐えることが多すぎて、歌はたくさんだ何も得られないと思った」と語るキューバ人に敬愛されているシンガー、イブライム・フェレールがラストでカーネギーホールに立ち拍手が鳴り止まないシーンは感動的でした。
たまに無性に聴きたくなるラテン音楽の名盤です。
アメリカン・グラフィティ
「1962年の夏。あなたはどこにいましたか?」
ご存知ジョージ・ルーカスの大ヒット作品。翌日に旅立ちを控えた若者たちの一夜を描いた「ワンナイトもの」。
様々な出来事をオールディーズの名曲に乗せて描いた青春映画の傑作ですね。この映画をきっかけに日本でもオールディーズブームが起こりました。
ビル・ヘイリー、バディー・ホリー、プラターズ、デル・シャノン、ボビー・フリーマン、ビーチ・ボーイズなどもうキラ星のごとく並ぶシンガーの楽曲はルーカス監督自身の好みでチョイスされたそうです。
現在でもこの時代の青春群像を描いた作品は「アメグラもの」と表現されるようにその後続く映画の原点と言える名作ですね。
グリース
「アメグラもの」の代表作の1本ですが、元はブロードウェイで大ヒットしたミュージカルをジョン・トラボルタとオリビア・ニュートン・ジョン主演で映画化した作品。
「アメリカン・グラフィティ」が当時のヒットソングを全編に散りばめたのに対し、「グリース」はミュージカルで登場人物が劇中で歌い踊る曲は、オリジナルが多くサントラ盤も全米、全英そして日本でヒットチャートの1位を記録しました。
60年代のアイドルシンガーフランー・アヴァロンや往年の名バンドシャナナが出演しているのも話題になりましたね。
「愛のデュエット」始め名曲揃い、バラエティーに富んだ楽しい1枚です。
コットンクラブ
禁酒法時代のニューヨーク。マンハッタンのハーレムに実在した高級クラブ「コットンクラブ」を舞台にギャングの抗争を描いたコッポラ監督の作品。
コットンクラブは黒人初の世界ヘビー級チャンピオンであるジャック・ジョンソンの持ち物でしたが、オウニー・マドゥンが経営権を握りデューク・エリントンやキャブ・キャロウェイ、ルイ・アームストロングなど超一流ミュージシャンが出演。
またクラブでの演奏がラジオで放送さらデューク・エリントンの名が全米に知られたのはこのラジオ放送のおかげだとも言われています。
ゴージャスな雰囲気を味わえる贅沢な1枚ですね。
ブルース・ブラザーズ
アメリカの人気テレビ番組「サタデー・ナイト・ライブ」でコメディアンのジョン・ベルーシとダン・エイクロイドが演じた人気コーナーにストーリーを付けて映画化した作品。
ブルースとソウル・ミュージックのリバイバルバンドであるブルース・ブラザーズですが、その黒ずくめのスタイルも往年のブルースミュージシャンへのオマージュだったそうで、日本でも初期のバブルガムブラザーズがこのスタイルでしたね。
選曲も良く何度聴いても飽きないドライブ感溢れた名盤ですね。今更ながらジョン・ベルーシの死が惜しまれます・・・。
ジャージー・ボーイズ
60年代の人気グループ「フォーシーズンズ」の結成から解散までを描いたミュージカルをクリント・イーストウッド監督が映画化した作品。
1962年の全米ナンバーワンヒット「シェリー」や「君の瞳に恋してる」などタイトルは知らなくても曲を聴けば「これ知ってる」と思う曲がたくさんあるはずです。
イーストウッド監督はジャズファンとしても知られていて監督第一作の「恐怖のメロディー」ではスタンダード・ジャズの名曲「ミスティ」と効果的に使いましたが、さすがこの作品も泣ける名作です。
しかしはずれのない監督ですねぇ。ミドルエイジにはたまらない若い世代には新鮮な間違いない1枚です。
上海バンスキング
1979年オンシアター自由劇場で上演された戯曲。1984年に深作欣二監督で88年には串田和美監督によって2度映画化されていますが、やはり舞台の魅力には遠く及びませんね。
「生バンドでつづる黎明期のジャズマン達の恋と夢。あの街には人を不幸にする夢が多すぎた・・・」というキャッチフレーズの通り、プロのミュージシャンではなく劇団員が実際に演奏するという画期的なスタイルでの上演でした。
このスタイルはのちに映画「スィング・ガール」でも取り入れられましたね。
テーマ曲「ウェルカム上海」と「港は雨の晩」以外は戦前のジャズの名曲が日本語で歌われているのも新鮮で、それまで歌手の経験のなかった吉田日出子さんの魅惑の歌声と共にたまらない1枚です。
実際に映画を観ていなくても音楽作品として、クオリティーの高い名盤ばかりです!
因みにこの記事は「五線譜のラブレター」を聴きながら書き上げました。
やっぱりいいなぁ。