前回の「アクション編」に続き今回は「ドラマ編」をお送りします。ドラマ編はもうひねる必要はありませんね。観て損はない作品をチョイスしました。
「愛と追憶の日々」♪
1983年公開。
ジェームズ・F・ブルックス監督作品。
シャーリー・マクレーン主演。
1984年第56回アカデミー賞で作品賞はじめ5部門、第41回ゴールデングローブ賞で4部門受賞した名作。
夫を亡くしひとりで生きる母親とその娘の30年の長きに渡って描いた感動の作品。
母として女としてたくましく生きるオーロラと元宇宙飛行士のサムとの恋愛、娘エマの結婚と不幸せな結婚生活。そしてエマは病に侵され・・・。
母娘とその周りの人たちとの関わり、そんな日常をブルックス監督は丁寧に描いて行きます。そしてその日常描写の積み重ねが最後に感動を呼びます。
人物造形も良く自然に感情移入して行くそんな作品ですね。特にシャーリー・マクレーンと元宇宙飛行士役のジャック・ニコルソンのユーモアとウィットに富んだ会話、ふたりの演技も見どころです。
物語前半に笑いが、そして後半には涙が・・・名作ですね。
「ユージュアル・サスぺクツ」♪
1996年公開。
ブライアン・シンガー監督作品。
ガブルエル・バーン、ケビン・スペイシー主演。
サンペドロ港に停泊中の船が突如爆発し炎上。焼死や銃殺された多数の遺体が発見される。
船は麻薬密輸に使われマフィアの対立抗争だと思われ、関税局捜査官クイヤンはただひとりの生き残りヴァーバルを取り調べます。
ケチな詐欺師であるヴァーバルは事件の真相を語り始めますが・・・。
アガサ・クリスティーの「アクロイド殺し」元にした唸るほど見事に練り上げられたシナリオ。やはり映画はシナリオだと痛感させられます。
そしてヴァーバル役のケビン・スペイシー!この作品は彼のための作品と言っても良いほど素晴らしい演技ですね。
「カリートの道」♪
1984年公開。
ブライアン・デ・パルマ監督作品。
アル・パチーノ主演。
デ・パルマ監督とアル・パチーノのコンビと言えば、この作品の10年後に制作されたオリバー・ストーン脚本の「スカーフェイス」の方が知られていますね。
過激なバイオレンスシーンが話題で、主人公アントニオ・モンタナのキャラクターも強烈でしたが、私は断然この作品の方が好きですね。
親友の弁護士デイヴの尽力で5年の服役で出所したかつての麻薬王カリート。しかし彼が戻った街は裏切りや殺人が頻発する信義のない人々が横行する街に変わり果てていました。
デイヴの紹介でクラブの経営者となったカリートは、かつての恋人ゲイルと復縁しバハマでレンタカー屋を経営する夢を叶えるため堅気の生活を送ろうとします。
しかしコカイン中毒のデイヴのせいでトラブルの渦中に巻き込まれ・・・。
「スカーフェイス」がひたすら暴力でのし上がって行く男の物語であるのに対して、この作品はカリートの心象風景が丁寧に描かれ、その寂寥感が胸を打つ物語に仕上がってます。
ふたつの作品を見比べてみるのもいいですね。
「スモーク」♪
1995年公開。
ウェイン・ワン監督作品。
ハーヴェイ・カイテル主演。
味わい深い良い作品ですが好みがはっきり分かれる作品でもあります。
作家ポール・オースターがクリスマス向きの短編をという依頼を受け書かれた作品を、香港のワン監督が気に入りオースター自身の脚本により制作されました。
ニューヨーク・ブルックリンにあるタバコ屋を舞台に、そこに集まって来る人々の嘘と真実をおり混ぜた過去と今の物語。
10年以上毎日同じ時間同じ場所の写真を撮り続けるタバコ屋。
銀行強盗の流れ弾で妻を失い書けなくなった作家。
麻薬中毒の娘を案じ苦しむタバコ屋の元恋人。
事故で妻と左手を失った男。
心に傷を負った人々がそれぞれの人生を語りかけます。
「観終わったあと誰かをハグしたくなる映画」という批評がありましたが、最後に語られるクリスマス・ストーリーと共に成熟した感性たじんわりと効いてくる作品です。
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「ライフ・イズ・ビューティフル」♪
1999年公開。
ロベルト・ベニーニ監督主演作品。
心に残る名作です。
私の好きな言葉のひとつに「泣くが嫌さに笑って候」という言葉がありますが、この作品を観るとこの言葉が浮かんで来ます。
第二次世界大戦前夜の北イタリアの田舎町にやって来た陽気な男グイド。彼は教師のドーラと知り合い結婚、息子ジョズエをもうけます。
やがて戦時色は濃くなり駐留した来たナチスドイツによって、家族は強制収容所に送られます。
母親と引き離され不安がるジョズエにグイドは「これはゲームなんだ」と嘘をつき不安を取り除こうとします。
父の言葉を信じ気丈にふるまうジョズエ、陽気なグイドはどんな過酷な状況になってもジョズエを勇気づけますが・・・。
物語は前半コメディーパート後半が収容所パート 、この構成も見事に作品を際立たせています。
絶望的状況の中でもコメディーの要素を盛り込む哀しく切ないコメディー。そして息子への希望を失わせないためについた愛情あふれた嘘。
イタリアのチャップリンと言われたベニーニ監督の渾身の一作です。
La vita e bella - Life Is Beautiful (ライフ・イズ・ビューティフル)
「アンコール」♪
2013年公開。
ポール・アンドリュー・ウィリアムズ監督作品。
テレンス・スタンプ主演。
泣ける秀作です!
無口で頑固者の老人アーサーはその性格が災いして、周囲との折り合いも悪くひとり息子との関係のも溝が出来てしまいます。
そんなアーサーも妻マリオンだけには心を許し笑顔を見せます。マリオンの何よりの楽しみは在籍するロックでポップな合唱団「年金ズ」の仲間と国際コンクールの予選に挑戦すること。
しかしマリオンの癌が再発、延命治療を拒んだ彼女はコンクールのオーディションの後アーサーを残し先立ってしまいます。
失意のアーサーは音楽教師エリザベスに誘われ「年金ズ」に参加することになるのですがやはり馴染むことが出来ないままコンクール予選に向かいます。
年老いたら誰にでも起こるようなことを丁寧に描かれ妻を亡くした男の寂寥感や家族の絆、そして人は大切な人のためなら変わることが出来る。
そんな勇気をこの作品は観るものに与えてくれます。
またシンディー・ローパーの「トゥルー・カラーズ」やビリー・ジョエルの「眠りにつく君へ」など劇中で歌われる曲も素晴らしく、観終わったあと暖かい気持ちになる作品です。
「スティル・クレイジー」♪
2000年公開。
ブライアン・ギブソン監督作品。
スティーブン・レイ主演。
1977年伝説のウィズベックコンサートでロックバンド「ストレンジフルーツ」は解散、そして20年後プロモーターに再結成を持ち掛けられたキーボードのトニー。
元マネージャーのカレンと昔の仲間を尋ね再結成にこぎつけますが、全員が50歳近いオヤジばかり、ツアーは失敗の連続で20年前の確執が蘇ったり若いバンドに馬鹿にされたり。
それでも彼らには失くしてしないものがあります。オヤジだからこそ出せる味がある。イギリス映画らしく辛辣なコメディーですが、熱は観る者に伝わって来ます。
音楽シーンのカッコよさと熱いクライマックス。ツッコミ所もありますがそんなことはどうでもいいと思う出来栄えの熱く良い作品です。
「グッド・ウィル・ハンティング」♪
1998年公開。
ガス・ヴァン・サント監督作品。
当時無名の俳優だったマット・デイモンと共演のベン・アフレックの脚本が高い評価を受け、ゴールデングローブ賞とアカデミー賞で脚本賞を獲得した作品です。
天才的な頭脳を持ちながら心に傷を負い素行の悪い青年と、彼を更生させようとする妻を失った失意の心理学者の心の触れ合いを描いた感動のヒューマンドラマ。
養父から受けた虐待がトラウマになり誰にも心を開くことがない青年ウィルは、妻を失ったショーンが喪失からの再生をはかろうとする姿は心が揺さぶられます。
人は自分自身から逃げていたら一生逃げなければならない。そして自分を信じもう一度自分と向き合おうとするウィル。
自分を見失いそうになったとき何度でも観たい心の琴線に触れる作品です。
「ニューシネマ・パラダイス」♪
1989年公開。
ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品。
フィリップ・ノワレ主演。
映画の素晴らしさを再認識させてくる作品です。
ローマに住む映画監督サルヴァドーレは母の電話でアルフレードが死んだことを知らされトトと呼ばれていた子供のころを思い出すところから物語は始まります。
故郷のシシリーにある唯一の娯楽施設である映画館の映写技師アルフレードと、少年トトの世代を超えた友情、そして少年の成長譚など様々な側面はありますが。
この作品が多くの人を魅了するのは誰もがトトのような切なさや思い出、そういったものを抱えながら大人になって行ったからだと思います。
劇中アルフレードはトトに言います「若いのだから外に出て道を探せ。人生はお前が観て来た映画とは違う。もっと困難で厳しいものだ」
過去があるから今がある。そんな気持ちにさせてくれる余韻の残る心が満たされる作品です。
そしてエン二オ・モリコーネの音楽もこの作品をより素晴らしいものにしています。
映画「ニュー・シネマ・パラダイス完全オリジナル版」日本版劇場予告
「ラブ・アクチュアリー」♪
2004年公開。
リチャード・カーティス脚本監督作品。
イギリス首相とその秘書。
妻を亡くした男と義理の息子。
恋人を奪われた作家とポルトガル人のメイド。
会社社長と妻の離婚クライシス。
奥手のOLが同僚へ抱く恋心。
再起を賭ける老ロッカーとマネージャーの奮闘。
親友の新妻をずっと好きだった男。
イギリスでモテなくてアメリカへナンパ旅行に行く男。
ラブシーンの撮影中に恋に落ちる男優と女優。
8組19人の愛や友情をクリスマスを舞台にいわゆる「グランド・ホテル形式」で描いたハートフルな作品・
こういう作品は一歩間違えるとご都合主義が鼻につく、クサい展開になりがちですが「ブリジット・ジョーンズの日記」始め多くの作品を送り出したカーティス監督のシナリオはさすがに練り上げられています。
あり得ないような奇跡はひとつもなく、どのストーリーも目の前の状況に真摯に取り組んで「想いを伝える」ことに懸命になっている。
そんなところがこの作品の魅力ですね。ほっこりとしたハッピーな気分を求めている方に是非オススメしたい作品です。